音を広く聞くと、目の緊張もゆるむ?~視野を広げる簡単セルフケア~

音を広く聞くと、目の緊張もゆるむ?
視野を広げる簡単セルフケア
「目の奥に力が入っている」 「視野が狭くなったように感じる」 「首や肩まで緊張している」

パソコンやスマートフォンを見続けた後、人と長く話した後、 騒がしい場所から帰った後。このような感覚はありませんか?

目が疲れたときは、目を閉じる、温める、遠くを見るといった方法が よく知られています。もちろん、それらも大切なケアです。

しかし、目の疲れには、目そのものの負担だけでなく、 何かを見逃さないようにする 「注意の集中」が関係していることもあります。

今回は、音と視野を同時に使い、一点に集まりすぎた注意を やさしく広げる簡単なセルフケアをご紹介します。

聞き取ろうとすると、目にも力が入る?

私たちは会話を耳だけで聞いているわけではありません。

声が聞き取りにくいときは、相手の口元や表情、身振りなど、 目から入る情報も使って言葉を理解しています。

周囲が騒がしい場所では、必要な声を聞き分けながら、 相手の顔も見続けなければなりません。 そのため、聞き取りにくさがある人ほど、 無意識に視線を一点へ固定しやすくなります。

すると、まばたきが減る、目の奥に力が入る、顔が前へ出る、 首や肩が緊張するなど、目と身体の負担につながることがあります。

目と耳の注意はつながっている

音がした方向へ、自然に顔や目を向けた経験は 誰にでもあると思います。

これは、視覚と聴覚が完全に別々に働いているのではなく、 脳の中で空間的な情報を共有しているからです。

私たちは普段から、

  • どこから音が聞こえたか
  • その方向に何があるか
  • 自分からどのくらい離れているか
  • こちらへ近づいているか、遠ざかっているか

といった情報を、目と耳の両方から受け取っています。

さらに、足裏や関節から得られる身体感覚、 頭の動きや傾きを感じる前庭感覚も加わり、 脳が「自分がどこにいて、周囲がどうなっているか」をまとめています。

見ることも、聞くことも、身体の働き 見ることも聞くことも、目や耳だけで完結しているのではなく、 身体を含めた空間認識の一部です。

音を使って「一点集中」をゆるめる

スマートフォンの文字を読むときや、 相手の声を聞き逃さないようにするときは、 必要な情報へ注意を絞っています。

集中そのものは悪いことではありません。 問題は、その状態が長く続き、 周囲の景色や音、身体の感覚が入りにくくなることです。

「正面以外にも景色がある」
「身体の周りにも音がある」

そのことを、目・耳・身体で感じていきます。

視覚と聴覚を薄く広く使い、集中し続けていた状態から、 周囲の空間を受け取れる状態へ戻していくワークです。

一点集中による目の疲れと、視覚・聴覚・身体への注意を広げる考え方
一点へ集中しすぎた状態から、目・耳・身体で空間を広く受け取る状態へ
このワークの目的 このセルフケアは、聴力や難聴、眼精疲労を治療するものではありません。 目・耳・身体の使い方に気づき、過剰な集中をゆるめるための方法として 行ってください。

ワーク前に現在の状態を確認

まず、安定した椅子に楽に座ります。 足裏は床につけておきましょう。

顔を正面に向け、目の前にある一点を自然に見てください。

このとき、次の点を確認します。

  • 目の奥に力が入っていないか
  • 視野が正面だけに狭まっていないか
  • 顎、首、肩に力が入っていないか
  • 呼吸を止めていないか
  • 周囲の音がどのくらい聞こえているか

良い状態へ変えようとしなくても大丈夫です。 今の自分がどのように見て、聞いているかを確認するだけにします。

音と視野を広げる簡単セルフケア

音と視野を広げるセルフケアの4つの手順
30秒〜1分程度から、複数の感覚を「薄く・広く」使ってみましょう
1 身体を椅子と床に預ける

椅子に座り、足裏が床に触れている感覚を確認します。 背筋を無理に伸ばす必要はありません。 お尻を椅子へ、足裏を床へ預けるようにします。

肩や顎に力が入っていることに気づいたら、少しだけゆるめます。 呼吸も意図的に深くせず、自然に続けましょう。

2 正面をやさしく見る

正面にある一点へ目を向けます。 ただし、文字を読んだり、輪郭をはっきり捉えたりする必要はありません。 「その辺りをぼんやり眺める」くらいの見方にします。

一点を凝視するのではなく、 その周りにも景色があることを感じてください。

3 周辺の視野へ意識を広げる

顔と目は正面へ向けたまま、視界の左右へ意識を広げます。 正面を見ながら、右側と左側にも空間があることを感じます。

次に、視界の上と下にも意識を向けます。 見えているものの名前や色を正確に答える必要はありません。 視界の端にも何かが存在していることを感じるだけで十分です。

4 近くにある音へ気づく

視野を広げたまま、自分の近くにある音へ意識を向けます。 エアコン、時計、服が擦れる音、自分の呼吸など、 どのような音でも構いません。

音の正体を当てたり、はっきり聞き取ったりしようとせず、 「ここにも音がある」と気づきます。

5 少し遠くの音まで広げる

次に、部屋の外や建物の外など、 少し離れた場所から聞こえる音を探します。

車、風、人の声、鳥の声など、 聞こえてくる音を追いかけずに受け取ります。

  • 近くの音
  • 遠くの音
  • 右側・左側から聞こえる音
  • 正面や後ろに感じる音

一つの音へ集中するのではなく、 複数の音が同じ空間に存在していることを感じてみましょう。

6 景色・音・身体を同時に感じる

最後に、周辺の景色と周囲の音を同時に受け取ります。

  • 視界の左右にも景色がある
  • 身体の周りにも音がある
  • 足裏が床に触れている
  • 身体が椅子に支えられている
  • 呼吸が自然に続いている

すべてを鮮明に捉える必要はありません。 一つに強く集中するのではなく、 複数の感覚を「薄く、広く」使うイメージです。

ワーク後の変化を確認する

ワークを終えたら、もう一度正面を見ます。 始める前と比べてみましょう。

  • 視界が少し広く感じるか
  • 目の奥の力が抜けたか
  • まばたきが自然に出るか
  • 首や肩の緊張が変わったか
  • 呼吸がしやすくなったか
  • 周囲の音を頑張らずに受け取れるか

変化は大きくなくても構いません。

「少し明るく感じる」「正面以外も見えやすい」 「肩が下がった」「音の方向を感じやすい」など、 現れ方には個人差があります。 何も変わらない日があっても問題ありません。

変化を起こそうと頑張らない 大切なのは、良い変化を無理に起こすことではなく、 自分の感覚を観察することです。

どのようなときに行うとよい?

このセルフケアは、次のような場面で取り入れてみてください。

  • 人と長く話した後
  • 騒がしい場所から帰った後
  • パソコンやスマートフォンを長時間見た後
  • 目の奥や首・肩に力が入っているとき
  • 一つのことに集中しすぎたと感じたとき
  • 視野が狭くなっているように感じるとき

1回30秒〜2分程度で十分です。

長く行うよりも、 「今、一点に集中しすぎているかもしれない」と気づいたときに、 短時間行う方が日常へ取り入れやすいでしょう。

めまいや聞こえにくさがある方へ

無理をせず中止してください ワーク中に、めまい、吐き気、頭痛、視界の揺れ、 耳鳴りの増加などが現れた場合は中止してください。

前庭障害や強いめまいがある方は、 目を閉じたり、頭を大きく動かしたり、動く映像を見たりせず、 転倒の心配がない場所で座って行いましょう。

また、次のような症状がある場合は、 セルフケアより先に医療機関への相談が必要です。

  • 片耳が突然聞こえにくくなった
  • 急な耳鳴りや耳の詰まりが現れた
  • 強い回転性めまいがある
  • 物が二重に見える
  • ろれつが回らない
  • 手足のしびれや脱力がある
  • 今までにない強い頭痛がある

突然の聞こえにくさや耳の異常は、 早めに耳鼻咽喉科を受診してください。

頑張って見聞きする状態から、受け取る状態へ

目を休ませるというと、目を閉じる、温める、 遠くを見るといった方法が思い浮かびます。

しかし、目が疲れているときに必要なのは、 目だけを止めることではなく、 一点に集まりすぎた注意を、 音や身体を使って周囲へ戻すことかもしれません。

目・耳・身体は、別々に働いているわけではありません。 周囲の景色や音、自分の身体の位置を脳がまとめることで、 私たちは安心して空間の中にいられます。

頑張って見よう、聞こうとするだけでなく、 すでに入ってきている情報をやさしく受け取ること。

まずは1〜2分、自分の周囲にある景色と音へ 意識を広げてみてください。

ミエルラボのセッション

ミエルラボでは、視力の数値や目の動きだけでなく、 音への反応、視野、姿勢、呼吸、前庭感覚なども確認しながら、 その方に合った感覚の使い方を一緒に探しています。

参考文献

  1. Santangelo V, Spence C. “Is the exogenous orienting of spatial attention truly automatic? Evidence from unimodal and multisensory studies.” Consciousness and Cognition. 2008. PubMed
  2. Spence C. “Multisensory feature integration in (and out) of the focus of spatial attention.” Attention, Perception, & Psychophysics. 2020. PubMed
  3. Zuanazzi A, Noppeney U. “The Intricate Interplay of Spatial Attention and Expectation: a Multisensory Perspective.” Multisensory Research. 2020. PubMed
  4. Driver J, Spence C. “Cross-modal links in spatial attention.” Philosophical Transactions of the Royal Society B. 1998. PubMed
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