その使う順番、逆になっていませんか?
毎日コルセットを着けているのに腰痛を繰り返すなら、「外から支える前に、内側から支えられているか」を一度確認してみましょう。
毎日コルセットを着けているのに、なぜ腰が痛くなるのでしょうか?
介護や看護の現場では、仕事中ずっとコルセットを着けている方をよく見かけます。
「腰を痛めるのが怖い」
「着けていないと不安」
「腰痛予防として職場で勧められた」
もちろん、コルセットそのものが悪いわけではありません。
痛みが強い日や、身体への負担が大きい場面では、腰を外側から支えてくれる心強い道具です。
しかし、毎日コルセットを着けているのに、腰痛を繰り返しているとしたら、一度考えてみてほしいことがあります。
コルセットを着ける前に、自分の呼吸と腹圧で身体を支えられていますか?
もしかすると、腰を守るための順番が逆になっているかもしれません。
腰が痛い人ほど、呼吸と動作がバラバラになっている
利用者さんを抱えるとき。
ベッドから車椅子へ移乗するとき。
重い荷物を持ち上げるとき。
力を入れる瞬間、自分がどのように呼吸しているか意識したことはあるでしょうか。
腰痛を繰り返している方には、
- 普段から呼吸が浅い
- お腹や脇腹があまり動かない
- 胸や肩を使って息を吸っている
- 力を入れると息が止まる
- 肩や背筋を固めて動く
といった傾向がよく見られます。
つまり、腹部全体で身体を支えるよりも、胸・肩・背中・腰の筋肉を緊張させることで、身体を安定させているのです。
この状態で利用者さんを抱えようとすると、息を吸ったまま身体を固め、腕と腰の力で持ち上げる動きになりやすくなります。
問題は、息を吸うこと自体ではありません。
呼吸、腹圧、重心移動がつながらないまま、上半身の力だけで動いていることです。
この身体の使い方を何度も繰り返せば、腰に負担が集まるのは不思議ではありません。
その状態でコルセットを着けると、どうなるのか
コルセットは、腹部や腰まわりを外側から圧迫し、身体に安定感を与えます。
一方で、強く締めれば、お腹や脇腹、下側の肋骨が自由に広がる余地は小さくなります。
もともと腹式呼吸がうまくできず、胸や肩を使った浅い呼吸になっている人が、その状態でコルセットを着けたらどうなるでしょうか。
腹部の動きはさらに感じにくくなり、胸や肩を使った呼吸、息を止めて身体を固める動きから抜けにくくなります。
コルセットによって外側の安定感は得られても、呼吸と腹圧を使って内側から身体を支える感覚は育ちません。
ここが、コルセットの盲点です。
コルセットは腰を支えてくれても、腰を守れる身体の使い方まではつくってくれません。
腹圧が「お腹を支える力」になる
腹圧というと、腹筋に思い切り力を入れたり、お腹を硬く固めたりすることだと思われがちです。
しかし、本来の腹圧は、腹筋の力ではありません。
横隔膜、腹部の筋肉、背中側の筋肉、骨盤底などが協調し、お腹の内側に適度な圧力をつくります。
イメージとしては、身体の中にある風船です。
風船が前後左右、上下へ立体的に広がることで、腰だけに頼らず体幹を内側から支えることができます。
そして、その圧力は常に最大である必要はありません。
必要な支えをつくる 動作中は
適度に保つ 動作後は
余計な力を抜く
身体には、この調整が必要です。
コルセットで外側から常に固めるだけでは、この「支える・動く・緩める」という変化を感じにくくなります。
先に覚えたいのは「吐く息と動作を合わせること」
介助や荷物を持つ動作では、まず細く息を吐きながら動く練習をしてみてください。
思い切り吐き切る必要はありません。
お腹を強くへこませる必要もありません。
息を細く吐くことで、持ち上がっていた胸や肋骨が落ち着き、下腹部や脇腹に適度な張りを感じやすくなります。
その張りを保ちながら、
- 利用者さんや荷物に近づく
- 足元を安定させる
- 股関節と膝を使う
- 腰だけでなく身体全体で重心を移動する
という動作につなげます。
目指したいのは、
呼吸・腹圧・重心移動・意識が一致した状態
です。
「息は流れているけれど、身体の中心には支えがある」
この感覚をつかむことが、腰だけに負担を集めない動作につながります。
コルセットを使う前に確認したい順番
腰を守るために、まず身につけたい順番があります。
コルセットを外した安全な姿勢で呼吸を確認する
仰向けや座った姿勢で、お腹、脇腹、下側の肋骨が呼吸によって動いているか確認します。
胸や肩だけが上下していないかも見てみましょう。
吐く息と腹部の張りをつなげる
細く息を吐きながら、下腹部や脇腹に適度な支えが生まれる感覚を探します。
呼吸を簡単な動作につなげる
椅子から立つ、軽い物を持つなど、安全な動作から始めます。
吐く息、腹部の張り、脚の力、重心移動をひとつにつなげていきます。
必要な場面でコルセットを使う
身体を内側から支える感覚を身につけたうえで、痛みがある日や負担の大きい作業では、コルセットに助けてもらいます。
腰全体を強く固定する必要がない場合は、身体の状態に応じて骨盤周囲を支える軽いタイプから検討する選択肢もあります。
ただし、コルセットや骨盤ベルトにはそれぞれ異なる役割があります。症状や使用目的に合ったものを、医師や理学療法士などと相談して選ぶことが大切です。
コルセットが手放せなくなる腰痛のループ
腰が不安だから、毎日コルセットを着ける。
しかし、呼吸と身体の使い方は変わらない。
腹部をうまく使えないまま、肩・背中・腰を固めて仕事をする。
また腰が痛くなる。
さらにコルセットを強く締める。
このループに入ると、「コルセットがないと働けない」という不安も大きくなっていきます。
ここから抜けるために必要なのは、無理にコルセットを外すことではありません。
外側から支えてもらう前に、自分の呼吸で内側の支えをつくる感覚を取り戻すことです。
コルセットは悪者ではない。大切なのは使う順番
コルセットは、必要なときに身体を助けてくれる道具です。
しかし、呼吸が浅く、腹圧を調整できず、腰に負担を集める動作のまま着け続けても、腰を痛める原因となっている身体の使い方は変わりません。
まずは、
つくる。 重心を
移動させる。 身体全体で
動く。
この感覚を身につける。
そのうえで、どうしても負担の大きい日やサポートが必要な場面では、コルセットに助けてもらう。
コルセットを使うか、使わないかではありません。
自分の身体で支えることを先に覚え、コルセットは必要な場面で使う。
腰を守るために見直したいのは、その順番です。
介護する人の身体も、守られる必要があります
介護現場の腰痛は、個人の身体の使い方だけで解決できるものではありません。
ベッドの高さ、利用者さんとの距離、介助する人数、福祉用具の使用、職場の動線などを整えることも欠かせません。
そのうえで、自分がどのように呼吸し、どこを固め、どのように力を出しているのかを知ることが、腰への負担を減らす第一歩になります。
ミエルラボでは、痛みのある腰だけを見るのではなく、呼吸・腹圧・姿勢・重心・力を入れるタイミングまで含めて、身体の使い方を確認しています。
「コルセットを着けているのに腰が痛い」
「力を入れると呼吸が止まる」
「仕事が終わると肩や背中まで固まっている」
そのような方は、一度、コルセットを着ける前の身体に目を向けてみてください。
身体の使い方から、腰を守る。
ミエルラボでは身体の使い方のレクチャーも行っています。
ご相談・詳細は、ミエルラボ公式サイトよりご確認ください。
※強い腰痛、脚のしびれや筋力低下、排尿・排便の異常、発熱、転倒後の痛みなどがある場合は、自己判断だけで対応せず、医療機関へご相談ください。
