日本人は本当に目が悪い人が多いのか?
データで見る、近視が増える本当の理由
「日本人は目が悪い人が多い」と感じる方は多いかもしれません。実際、日本では小学生から中学生、高校生へと進むにつれて、裸眼視力が低い子どもの割合は増えていきます。 ただし、データを丁寧に見ると、日本人だけが特別に目が悪いというより、日本を含む東アジアの都市部で、近視が増えやすい生活環境が重なりやすいと考える方が自然です。
日本の子どもは、裸眼視力が低い割合が多い
文部科学省の学校保健統計を見ると、日本では裸眼視力1.0未満の子どもの割合が、学校段階が上がるにつれて増える傾向があります。
小学生では3割台、中学生では約6割、高校生では約7割程度まで、裸眼視力1.0未満の割合が増えていきます。 この数字を見ると、「日本人は目が悪い人が多い」と感じるのは自然です。
ただし、ここで注意したいのは、裸眼視力1.0未満が、そのまま近視を意味するわけではないという点です。 裸眼視力は、近視だけでなく、乱視、遠視、目の疲れ、検査時の集中力、照明環境などにも影響されます。
そのためこの記事では、「裸眼視力が低い」という話と、「近視が多い」という話を分けて考えていきます。
日本だけではなく、東アジアで近視が多い
近視が多いのは、日本だけではありません。シンガポール、韓国、中国、香港、台湾など、東アジアの都市部では、子どもや若者の近視率が高いことが多くの研究や公的資料で報告されています。
図解1:日本だけが突出しているというより、日本を含む東アジアの都市部で近視が多い傾向があります。画像URLはWordPressにアップロードした図解に差し替えてください。
たとえばシンガポールでは、小学校6年生頃で約60〜65%、若年成人では80%前後が近視とされるデータがあります。 韓国や中国の都市部でも、子どもや若者の近視率が非常に高いことが報告されています。
一方で、オーストラリアや英国、米国などでも近視は増えていますが、東アジアの都市部ほど高い割合ではないことが多いです。
つまり、問題は「日本人の目が弱い」ということではありません。日本を含む東アジアでは、近視が進みやすい生活環境が重なりやすい、という見方が大切です。
東アジアで近視が多い主な要因
東アジアで近視が多い背景には、いくつかの要因があります。 その中でも、研究上とくに重要視されているのが、教育・近業作業と屋外時間の不足です。
図解2:近視が増えやすい環境は、ひとつの原因だけではなく、複数の要因が重なって生まれます。
1. 教育・近業作業の多さ
東アジアでは、早い時期から勉強、宿題、塾、受験、成績競争が生活の中に入りやすい傾向があります。 その結果、子どもたちは長い時間、近くを見続けることになります。
教科書、ノート、問題集、タブレット、スマホ、パソコン。 どれも目を近い距離に固定しやすいものです。 近くを見る時間が長くなると、目は近距離にピントを合わせ続けます。
さらに、前かがみの姿勢が続くことで、首や肩も固まりやすくなります。 近視は、単に「目を使いすぎた」だけで起こるものではありません。 近くを見る時間が長く、遠くを見る時間が少なく、身体を動かしながら見る機会が少ない。 こうした生活の積み重ねが、目の成長に影響している可能性があります。
2. 屋外時間の少なさ
近視の予防で、とくに重要だと考えられているのが屋外時間です。 屋外では、室内よりも光の量が圧倒的に多くなります。 この明るい光が、目の成長、とくに眼軸の伸びすぎを抑える働きに関係していると考えられています。
また、外では自然と遠くを見ます。 空を見る。遠くの建物を見る。人の動きを追う。身体を動かしながら見る。 こうした経験は、室内で画面や文字を見続ける生活では得にくいものです。
屋外時間は、単に「太陽を浴びる時間」ではありません。目が遠くを見て、広く見て、身体と一緒に働く時間でもあります。
3. 都市化と緑地の少なさ
東アジアの近視を考えるうえで、都市化も大切です。 都市部では、子どもが自由に外で遊ぶ場所が限られやすくなります。
交通量が多い、マンションが多い、公園が少ない、夜でも明るい、室内で過ごす時間が長い。 このような環境では、目は自然と近くを見る時間が増えます。 また、緑や自然の中で遠くを見る機会も少なくなります。
つまり近視は、勉強やスマホだけの問題ではありません。 子どもがどんな空間で育つのか。どれだけ外に出られるのか。どれだけ遠くを見る機会があるのか。 そうした生活環境全体が関係しています。
4. 遺伝だけでは説明できない
親が近視の場合、子どもも近視になりやすい傾向があります。 ただし、それをすべて遺伝だけで説明することはできません。
なぜなら、近視はここ数十年で急激に増えているからです。 遺伝子そのものが、短期間で大きく変わるわけではありません。 大きく変わったのは、生活環境です。
外で遊ぶ時間が減った。近くを見る時間が増えた。勉強や画面を見る時間が増えた。都市部で室内中心の生活になった。 つまり、遺伝は土台として関係するけれど、近視が増えている背景には環境の影響が大きいと考えられます。
5. スマホやタブレットは原因の一部
近年、スマホやタブレットが視力低下の原因として語られることが増えました。 もちろん、長時間の画面使用は目に負担をかけます。
ただし、スマホだけが悪いと考えると、本質を見落としてしまいます。 問題は、スマホそのものよりも、近い距離で、長時間、同じ姿勢で、室内で、目を固定して見続けることです。
これはスマホだけでなく、読書、勉強、ゲーム、パソコンでも同じです。 大切なのは、何を見るかだけではなく、どの距離で見るか、どれくらい続けるか、どんな姿勢で見るか、そのあと遠くを見る時間があるかです。
その他の先進国とは何が違うのか
近視は、東アジアだけの問題ではありません。 欧米やオーストラリアでも、近視は増えています。 スマホやパソコンの使用時間が増え、室内で過ごす時間が長くなり、教育期間も長くなっているからです。
図解3:原因がまったく違うというより、東アジアでは近視に関わる要因が早い時期から強く重なりやすいと考えるとわかりやすくなります。
では、東アジアとその他の先進国では、何が違うのでしょうか。 それは、原因そのものがまったく違うというより、要因の強さと組み合わせが違うと考えるとわかりやすいです。
| 東アジア | 受験や塾が早い時期から始まりやすい。近距離作業の総量が多い。都市密度が高く、屋外時間が減りやすい。複数の要因が生活全体に組み込まれやすい。 |
|---|---|
| その他の先進国 | 近視は増えている。画面時間も増えている。教育や近業作業の影響もある。ただし、東アジアほど高い割合ではない地域も多い。 |
つまり東アジアでは、教育圧、塾文化、都市化、屋外時間の少なさ、近距離作業、スマホ使用が、幼い時期から強く重なりやすい。 そのため、近視の発症が早く、割合も高くなりやすいと考えられます。
目が悪いのではなく、目の使い方が偏っている
ここで大切なのは、子どもの目を責めないことです。 日本人の目が弱いわけではありません。東アジアの子どもの目が特別に悪いわけでもありません。
問題は、目の使い方が偏りやすい生活環境にあります。 現代の生活では、近くを見る、狭く見る、長く見る、固めて見る時間が増えています。
図解4:目は近くを見るだけの器官ではありません。遠くを見る、広く見る、光を感じる、身体を動かしながら見ることも大切な働きです。
一方で、遠くを見る、広く見る、外で見る、身体を動かしながら見る、ぼんやり景色を見る。 こうした時間は、以前より少なくなりやすくなっています。
目は、本来とても柔軟な器官です。 近くを見るだけでなく、遠くを見て、明るさを感じ、空間をとらえ、身体と連動しながら働いています。
ミエルラボでは、視力だけでなく、視界、姿勢、身体の使い方、脳や自律神経の状態まで含めて「見え方」を考えています。
まとめ
日本人は本当に目が悪い人が多いのか。
この問いに対する答えは、「日本では裸眼視力が低い子どもは多い。けれど、日本人だけが特別に目が悪いわけではない」です。
近視は、日本だけでなく、東アジアの都市部で特に多く見られます。 その背景には、教育圧、近距離作業、屋外時間の少なさ、都市化、スマホやタブレットの使用、そして生活全体の変化があります。
目は、ただ文字や画面を見るためだけの器官ではありません。 遠くを見て、広く見て、光を感じ、身体と一緒に空間をとらえる器官です。
だからこそ、視力だけを見るのではなく、どんな環境で見ているのか。どんな距離で見ているのか。どれだけ外で遠くを見る時間があるのか。身体を固めずに見られているのか。 そこまで含めて考えることが、これからの目のケアには大切です。
目だけでなく、身体や視界から見え方を整える
ミエルラボでは、目を単独で見るのではなく、脳・身体・姿勢・空間感覚とのつながりから、見え方を整えるサポートを行っています。 眼科での検査や医療的な判断が必要な場合は、必ず眼科受診をおすすめしています。
参考資料
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International Myopia Institute, IMI Risk Factors for Myopia
https://myopiainstitute.org/imi-whitepaper/imi-risk-factors-for-myopia/ -
Ministry of Health Singapore, Speech by Dr Lam Pin Min at the opening of SNEC Myopia Centre
https://www.moh.gov.sg/newsroom/speech-by-dr-lam-pin-min-senior-minister-of-state-for-health-at-the-opening-of-the-singapore-national-eye-centre-s-myopia-centre-16-august-2019/ -
French AN, et al. Prevalence and 5- to 6-year incidence and progression of myopia and hyperopia in Australian schoolchildren. Ophthalmology. 2013.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23522969/ -
Yotsukura E, et al. Current Prevalence of Myopia and Association of Myopia With Environmental Factors Among Schoolchildren in Japan. JAMA Ophthalmology. 2019.
https://jamanetwork.com/journals/jamaophthalmology/fullarticle/2747744 -
文部科学省 学校保健統計調査
https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa05/hoken/1268826.htm
